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異なる領域が交差し、手作りの空間で躍動する。芸大生たちが駆け抜けた濃密な日々

  • 執筆者の写真: 龍男 島田
    龍男 島田
  • 1 日前
  • 読了時間: 7分

メンバーの軌跡を残す「花園アレイアーカイブズ」。今回は、2024年から2025年の間に共同アトリエを構えていた東京藝術大学油絵専攻の成田千里さんと寺西理央さんをご紹介します。バックグラウンドの異なる入居者たちとの交流や、仲間と壁から作り上げた空間づくり。二人が花園アレイで過ごした濃密な時間と、そこで得た「場」の価値について伺いました。

アートに向き合う現在地。油絵と立体、それぞれの表現


──お二人は現在、東京藝術大学の油絵専攻で学ばれていますが、日頃はどのような制作活動をされているのでしょうか。


成田:私は油絵専攻にいるのですが、絵画よりも、木工や立体作品を中心に制作しています。空間に働きかけるような大きな作品を作ることが多くて、どうしても大学の中だけでは手狭になってしまうため、外にアトリエを構える必要がありました。それで、寺西たちと一緒に花園アレイで部屋を借りて制作拠点にしていました。


寺西:私は油絵を中心に、日本の美術史や古典絵画の要素を取り入れた絵画作品を制作しています。もともと日本の歴史や古い資料にすごく関心があって、そういった文脈を自分の表現にどう落とし込めるかを探求しながら描いています。


ルーツは「古典の挿絵」と「大工の父」。芸大を目指すまで


──東京藝術大学を目指したきっかけや、それぞれの表現スタイルに至った背景には、どのような体験があったのでしょうか。


寺西:私が日本の美術に強く惹かれるようになったのは、高校2年生の時でした。ちょうど新型コロナウイルスが流行して、学校が長期休みになってしまったんです。その時間ができた時に「自分が本当に好きなものは何だろう」と自問自答して、色々なものを勉強していく中で、日本の美術史の面白さに気づきました。古典の教科書の挿絵で、前田青邨が平安時代の舞台を描いた作品を見た時に、すごく良いなと感動して。そこから岸田劉生や岡倉天心など、日本の洋画家たちについて調べるようになり、本格的に芸大を目指すようになりました。


成田:私の場合は、父親が木工の大工をしていたことが大きいです。家に木材や工具がたくさんある環境で育ったので、小学生の頃から図工の授業が大好きでした。絵を描くのも好きでしたが、木を使って立体物を作ることが何より楽しくて。そのまま美術系の高校に進学したんですが、周りのみんなが美術予備校に通っているのを見て、私も本格的に美大を目指すようになりました。


きっかけは偶然の出会い。壁も床もDIYで作り上げたアトリエ


──大学に入学後、どのような経緯で花園アレイに入居することになったのですか。


成田:大学1年生の春休みに、「きらめき彫刻祭」という芸術祭のボランティアに参加したんです。その打ち上げの席で「みんなどこで制作しているの?」という話になって。その時に「花園アレイでアトリエを借りているよ」という方がいらっしゃって、そこで初めてあの場所が借りられることを知りました。


寺西:大学の中だけだと、夏休みや冬休みのたびに荷物を全部持ち帰らないといけなかったり、夜8時で閉まってしまったりと、制作に没頭するには少し不便な部分があったんです。それで、大学から近くて、時間を気にせず制作できる場所を探していました。


成田:ダメ元で管理人の方に連絡してみたら、ちょうど一部屋空くタイミングで。それで、油絵専攻の女子メンバーを中心に声をかけて、最初は5人で、次の年は6人で一つの部屋をシェアすることになりました。入居する時にみんなで部屋の壁や床を作ったのは、今でも覚えていますね。フローリングを汚さないようにベニヤ板を敷いて養生したり、自分たちでパーテーションを立てて空間を仕切ったり。ゼロから自分たちの拠点を作り上げていくプロセス自体が、すごく楽しかったですね。


寺西:退去する時も、みんなで協力して解体したんです。使っていた木材を分解して、次のアトリエで新しい棚に作り替えたりして。みんなで大きな荷物を抱えながら、3階の階段を慎重に運んだのも今となっては良い思い出です。



パーテーションで区切ったそれぞれの世界


──最大6人で一部屋をシェアされていたとのことですが、普段はどのように空間を使っていたのでしょうか。全員が揃うことも多かったのですか?


成田:意外と、全員が一斉に部屋にいる瞬間はほとんどなかったんです。みんな生活リズムが全然違っていて。午前中にちょっと来て荷物を置いていく子もいれば、夕方から来てずっと作品を作っている子もいて、それぞれが自分のペースで場所を使っていましたね。


寺西:そうですね。パーテーションで仕切った自分たちのスペースで、各自が没頭している感じでした。でも、私と成田は制作の生活リズムがすごく似ていたんです。私たち、夜間に制作することが多くて。


成田:大学が終わった後に「もうちょっと描きたい、作りたい」ってなって、一緒に作品をアレイに運び込んで作業する、みたいな毎日でしたね。行くといつも寺西がいるから、「あ、今日もいるな」ってお互いの制作風景をなんとなく見守っているような関係性でした。


寺西:大学から歩いて15分くらいの距離だったので、二人で大きな作品を一緒に運んだりもしましたね。夜遅くまでお互いの存在を感じながら制作に没頭できたのは、とても心強かったです。


視点の違いが交差する、刺激的なコミュニティ


──花園アレイという環境で制作してみて、どのような刺激がありましたか。


成田:普通のマンションをアトリエとして借りるのとは全く違って、他業種の方々との交流があったのがすごく面白かったです。私は建築に興味があったので、同じ建物に建築事務所の方々がたくさん入居されている環境は刺激的でした。すれ違った時に声をかけていただいたり、アトリエを見学させてもらったりして、すごく勉強になりましたね。


寺西:私は1階のカフェの存在が大きかったです。食事が美味しいのはもちろんですが、「トワイライトタイム」という交流イベントで、入居者の方々や近所の人たちが手作りの料理を持ち寄ったりして。建築家やエンジニアなど、普段の学生生活では出会えないような人たちと、美味しいご飯を食べながらフラットに話せるのが楽しかったです。


成田:私たちのような美大生と建築家の方では、同じものを見ていても捉え方が全然違うんです。例えば料理一つとっても、私たちは「色が綺麗で形が面白い」と直感的に楽しみますが、建築家の方は「これはこういう構造で、こういう背景があるからこの形なんだ」と論理的に分析したりして。異なる領域の人たちが、一つのものを介してコミュニケーションを取れる、あの「場」の空気感がとても居心地良かったです。



交流を楽しめる人にぜひ来てほしい場所


──花園アレイでの経験を経て、お二人は今後どのような未来を描いていますか。


成田:自分の得意な木工や立体制作のスキルを活かせる仕事をしたいですね。ギャラリーや展示会の施工、舞台美術の制作など、空間を作る裏方の仕事をしながら、自分の表現も磨いていきたいと考えています。大学院への進学も考えているところです。


寺西:私は卒業後も制作は続けつつ、大学院に進学して、日本の歴史的資料の調査や出版、学芸員のような古い資料に触れられる仕事にも携わりたいと考えています。自分の作品を作るだけでなく、歴史と美術を繋ぐような活動を並行してやっていけたらいいなと思っています。


──最後に、これから花園アレイに関わる方や、同じように場を探している学生に向けてメッセージをお願いします。


成田:様々な業種の方とコミュニケーションを取って、自分の専門外の視点から意見をもらいたい人には、花園アレイは最高の場所だと思います。文化交流を楽しみたい、面白い大人たちと関わりたいという好奇心がある人には、ぜひあの環境に飛び込んでみてほしいですね。


寺西:私たちのように、純粋に「作る」ことに向き合っている学生がもっとあの場所に集まったら、さらに面白い化学反応が起きるんじゃないかと思います。美味しいご飯と、温かい人たちとの出会いが待っているので、少しでも興味があれば一度訪れてみてほしいです。

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