メンバーの軌跡を残す「花園アレイアーカイブズ」。今回は、花園アレイの設立当初から入居していた自然電力株式会社の松村 宗和(まつむら むねかず)さんをご紹介します。花園アレイの入居者では唯一のエネルギー系の同社。入居の経緯や、花園アレイならではの楽しみ方などについて伺いました。
入居時期
2020年5月-2024年3月
松村 宗和(まつむら むねかず)
自然電力株式会社
東京大学中退。これまで事業創造支援会社ブルーマーリン・パートナーズ(株)にて取締役COO、GMOクリック証券(株)子会社にて代表取締役CEO、法人向けソフトウェア開発会社アステリア(株)(東証プライム3853)にて事業部長、マーケティング部長、米国子会社ジェネラルマネージャーなどを務める。2018年、自然電力(株)に参画し現職。また2019年、ブロックチェーン開発会社(株)ToposWareの創業に関わり代表取締役COOを務める。
ー最初に、御社について教えてください。
松村:弊社は自然エネルギー発電所の開発事業や運営事業などを行う会社です。太陽光や風力、小水力などの自然エネルギー発電所の設置・運営に必要なすべてのサービスを手がけています。中でも、私が所属する株式会社Shizen Connectでは、蓄電池やEVの充放電器を遠隔制御するIoT/AIシステムを作っています。
近年、社会的に再生可能エネルギー(以下、再エネ)の普及が進んでおり、太陽光発電所や風力発電所といった施設が増えてきています。ただ、太陽光発電は急に曇れば止まってしまいますし、風力発電は風が止んだり吹いたりすれば発電量が大きく変わってしまうんですね。
電力は、発電している量と皆さんが使っている電気の量、つまり需要と供給のバランスが取れていなければ、どこかで過不足が生じてしまいます。ですから、再エネの普及が進んで太陽光や風力の発電設備が増え、発電量の変動が大きくなるほど、需給の調整によっていかにバランスを取るかが重要になってきます。
そのバランスを取るための方法の一つとして、遠隔制御によって足りない時に電気を放電し、余っている時に充電するようなシステムを私たちは提供しています。
どういうイメージかというと、例えば火力発電所は電力が余ったら発電を止めて、足りなくなったらどんどん燃やして、といった形で電力の需給の調整をしているんですね。私たちは、それと同じようなことをクラウド上で行なっているんです。それを実現するための仮想発電所(バーチャルパワープラント)を作るためのソフトウェアを提供しています。
ー花園アレイにはアート系やデザイン系の入居者が多いので、エネルギー系の会社は珍しいですよね。花園アレイとの出会いや、入居のきっかけを教えてください。
松村:最初の出会いは花園アレイができる前、オーナーさんから「花園アレイを再エネ100%で運営したい」と弊社にご相談をいただいたんです。いろいろとお話しさせていただいたり、提案させていただいたりしたのですが、結局そこでは実現に至りませんでした。
ただ、ちょうどその頃に弊社のソフトウェア事業で新しいオフィスを必要としていまして。タイミング的にも条件的にも花園アレイがぴったりだったので、入居を決めました。さらに、その1年ほど後にまたオフィスが必要になったので、もう1部屋借りて、合計で2部屋借りていました。
ーどのような条件が入居の決め手となったのですか。
松村:正直、金額が一番の決め手でしたね(笑)でも、花園アレイの環境に親和性の高さを感じたことも大きかったです。
花園アレイには、芸術家の方もいれば、芸術ではなくとも極めて変わったビジネスモデルで事業をされている方もいて、他にはないような面白いことをされている方がたくさんいました。
そしてどの方も、「より良い街や社会をつくりたい」「より良い世界にしたい」というビジョンを持っているんですね。
良い世界を作り上げるパーツの一つが、アートだったり、建築だったり、食べ物や飲み物だったり、私たちが取り組んでいる脱炭素だったり。私たちは、「地球に優しいエネルギー」というパーツを担っているだけで、それぞれが持っている思いは同じだと思うんです。
そういう思いや、その先にある世界観を共有できる人たちの集まりだと思ったし、そこの価値観が近くて親和性の高い場所だと感じましたね。
ー外から見たら分野が違う人たちだけれど、実は親和性の高い人たちが集まっている場所だったのですね。そういう場であることのメリットをどんなところに感じましたか。
松村:ダイレクトに世界観を共有しているから、それぞれが持っている何かを組み合わせて何かやろうという話ができることがまず一番ですね。
例えば、私たちの仕事って「地域貢献」にもすごく距離が近いんですよ。2018年の北海道胆振東部地震では、道内ほぼ全域におよぶ大規模な停電がありました。それを受けて、北海道を、停電が起こっても電気が使えるようなエリアにしようと取り組んでいるんですね。
蓄電池と太陽光発電の仕組みを活用しながら、行政施設を弊社が遠隔監視し、停電になっても役場や託児所、病院などで電気が使えるような街の基盤づくりをしています。
花園アレイの入居者は世界観やビジョンが近いからこそ、ここで私たちが持っている「地域貢献をしたい」という感覚と、花園アレイの入居者が持っている地域に対する貢献の感覚もすごく近いんですよ。しかも、皆さん異業種なので、「こういうことを一緒にできたら面白いね」というアイデアにもすごく広がりが出るんです。入居時期がちょうどコロナ禍と被ってしまったので、私たちは何もできなかったのが残念でしたね。
あともう一つ面白いと思ったことがあって。入居者の方々と話してみて分かったのですが、ビジネスとしてプロフェッショナルな人がすごく多いんですよ。ファイナンスやマーケティング、テクノロジーなどに精通していて、「今はこういうファイナンスだから、こうやって資金調達するんだ」「イグジットはどうする」とか、いろいろな話が飛び交っていました。リアルビジネス的な視点でも、違う業界と意見交換できるのは非常に新鮮で面白かったですね。
ーそういった交流はどのような場で生まれていたのですか?
松村:定期的に飲み会を開催してくれていたので、それに顔を出して、交流していました。あとは、敷地がそんなに広くないので、階段ですれ違ったときに話したり。入居者同士の距離感が近い場所なので、違う会社なんだけど、むしろ同じ会社の人よりも近いような距離感で話していましたね。
ー実際に入居してみて、「花園アレイにいる価値」はどんなところにあると思いますか?
松村:それぞれ違っていても、「より良い世界」くらい高い抽象度をみんなで共有して、そんな未来を作るためにコラボレーションできる方たちと出会えるのは、やっぱり大きな価値だと思います。何か自分のビジョンに対してアプローチする時の仲間に出会い、共に一歩踏み出せるような場所です。
また、入居者がリアルビジネスに強い方々なのも大きいですね。自分たちのアイデアを実現するときに相談でき、信頼を置けるような方々と付き合えるのも花園アレイの価値だと思います。
ー花園アレイが「今後こんな場所になってほしい」という思いがあれば教えてください。
松村:実は僕も同じ池之端の住民でして、もっと地域向けのイベントをして欲しいと思いますね。そして、地域の中で何か一緒に取り組めたらいいな、とすごく思っています。
先日、小学生の息子と地域のごみ拾いに行ったんですよ。終わった後にお菓子がもらえたので、「良かったね」と話したら、「お菓子が欲しいわけじゃなくて、街が綺麗になるのが嬉しくて来たんだよ」と言っていたんです。
その時に、何か街のための活動があって、子どもたちも含めて地域のみんなでいい街を作っていけるのっていいなって思ったんですよね。そういうことにも是非取り組んでほしいし、それを街の人にも分かるように打ち出したり、子ども向けにも打ち出したりして、地域にも広げていってほしいです。
一軒家が多く、長年住み続けている世帯が多い地域でもあり、地域としての基盤も強い場所なので、地域としてもどんどん先導して発信していってほしいと思います。
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